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介護報酬削減で介護離職者が増加

安倍政権が介護報酬を削減した理由と経緯です

AS_824068322015年4月に介護報酬が見直され、9年ぶりに報酬が引き下げられました。報酬は3年ごとに見直され、介護保険法の見直しと連動されています。先進国のなかでも先んじた法制度でしたが、3年ごとに見直す条件で制度化した経緯があります。

報酬は、介護保険に加入しサービスの利用者が施設などに支払う報酬を意味します。利用者は1割の自己負担で済みますが、9割は国の介護保険から支出されます。今度の報酬削減は施設運営事業者には収入減になります。このことにつき安倍政権側の財務省が2015年度方針を発表した時点で、全国老人施設協議会や全国老人保健施設協会、日本慢性期医療協会は報酬削減に反対姿勢を示しました。財務省側は厚生労働省に報酬削減の申し入れを行い、経済産業省は特養施設は事業収益が高いため介護職の人件費アップに余裕があると見ていました。

ところが実態は特養建設に実質的ニーズはありますが、この3年で特養建設計画があっても実行できなかった自治体が全国で半数以上あったという事実です。理由は採算が取れないということですが、今度の報酬削減で更に追い打ちをかけた格好です。報酬削減によるに収入減、慢性的な人手不足で事業者が撤退した事例が報告されています。

特養などは事業主体だけでは運営が困難です。ところが報酬削減のときの国の言い分は、既存の特養施設の収益差益が中小企業より高いことを指摘しました。内部留保が多いはずだから報酬削減を行い、中小企業並みか、それ以下の差益率にさせようとする狙いでした。この状態で更に利用者の自己負担増を行えば、利用者は介護サービスを敬遠する可能性があります。

結局、廻りまわって事業困難になり、新施設建設にブレーキをかけてしまいます。施設建設ニーズは高い状況に変わりはありません。介護施設に企業活動並みの市場原理主義を導入すること自体に無理があり、適正な運営は必要ですが、事業者負担は別々に考え解決策を講じるべきです。アベノミクスという経済偏重主義にそぐわない事業があることを肝に銘じるべきでした。

介護事業者倒産と離職者が増加した原因は何かです

AS_45942810国の皮算用とは違い、アベノミクスに介護事業運営は適応し難いですが、無理やり経済得点を獲得したいためか介護報酬を削減しました。事実、報酬削減前後から事業者の倒産件数が増加している実態があります。2015年1~10月の老人福祉、介護事業の倒産は過去最多の62件になりました。内訳は訪問介護事業が25件、施設系のデイサービスや通所、短期入所介護事業が24件と前年対比で倍増しました。企業倒産は全体としてまだ低い倒産率で推移していますから、介護不況に入り込んでいます。

介護職の人件費は他の事業従事者の平均給与より低いとして賃金アップを期待されてきましたが、結局、人件費アップは事業主体側が決定すべきですから、国がとやかく言っても権限は持ち得ないため政権側は言うだけで実行できません。

実は賃金アップより離職者が増加し始めています。施設運営者は事業収入が低くなると、人手不足でもリストラムードに陥る傾向があります。一般企業の処方箋を公的、私的福祉施設に落とし込むと、介護事業そのものが理念崩壊に近づく危険性があります。

事業者側は人手が欲しくても応募してきてくれない、しかも賃金は期待以上にそれほどアップしておらず、収益は減少し事業維持が困難になるという悪循環に陥ります。介護職は賃金アップはあまり期待できず、人手不足で業務負担が増大し、労働環境が悪化します。離職者の原因はそういう事実があります。

事業体が倒産すれば失業者は必ず増えますから、結果として先読みして離職者が増えたことも類推できます。介護職の離職率は20%を超え、全産業の平均離職率より高いです。このように労働環境の悪化、社会保障業界の不況は企業市場原理主義的な経済社会では、まったく別世界の事態になっていることを示しています。

政治的施策のミスは、一度狂いが生じたら簡単に修正できなくなる危険が孕んでいるため、事業者が巻き込まれてしまった形になりました。福祉型事業と資本主義中心型事業に対するアプローチとして見通しが甘かったと言わざるを得ません。

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