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介護の代償とは? 嫁による介護と相続問題

一昔前ならば嫁が介護を一身に引き受けるというケースもめずらしくはなかったでしょう。しかし、じつは嫁には相続権がないことはご存知でしたか。たとえばそれまで積み上げてきたキャリアを捨てて熱心に介護に取り組んだとしても、なんの補償もないのです。「それが家族というものだ」で済ませてよい問題なのでしょうか。

■仕事を辞め自宅介護していたAさんが家を追われるまで

AdobeStock_78938193マネージャークラスの仕事をしていたAさんですが同居していた義父が軽い認知症を発症したこともあり、辞職して介護中心の生活をおくっていました。認知症の進行とともに穏やかだった義父の性格はかなり変わってしまい、暴言に耐えることもあったそうです。また、徘徊の心配もあるので目を離すことができず、ひとりで出かける機会はほぼ皆無といった毎日でした。子どもはすでに独立していましたが、夫は多忙、夫の妹たちも遠方に住んでいるためめったに顔を見せることもなく、実質、Aさんがひとりで介護をしていました。

嫁が財産の話をするのはタブーのような雰囲気が強く、義父の死後までAさんが知ることはなかったのですが、じつは預金はほんの少ししかなく、財産らしい財産は自宅不動産のみでした。しかし、都内でも地価の高いあたりの豪邸のため、換金すれば結構な額になります。夫の妹たちは実家を売却した金額を等分することを主張してきました。話し合いは夫と妹たちだけですすめられ、Aさんは完全に蚊帳の外でした。結局、夫も実家を売却することに同意してしまい、Aさんは長年住み慣れた家を追われるようにして出て行かざるを得ませんでした。

■自宅介護のさまざまなリスク

Aさんのように家を奪われるまではしませんでしたが、同じく自宅介護をしていたBさんも「自宅で介護しなければよかった」と心底思うようなつらい経験をしました。夫とともに自宅で義母を介護してきたBさんですが、夫の妹に「義母名義の預金から使途不明金が1千万円近く引き出されている 」と主張され、その分だけ夫の遺産の取り分を少なくするように要求されたのです。

1千万円は公的介護保険の限度額を上回るサービスの利用、介護用品や衣料の購入にあてたもので、もちろん義母の了解も得ていました。義母の預金だけではなく、自分たちの預金を切り崩すこともあったそうです。しかし、なかなか義妹には理解されず、家庭裁判所での調停手続きにまで話がすすんでしまったということです。このような事態を避けるためにも介護に使った分のレシートはすべて保管しておくことをおすすめします。

■寄与分、養子縁組などを利用する

AdobeStock_73189945もし、介護を負担した嫁にも財産を残そうとするならば寄与分を利用するのもひとつの方法です。要介護2以上の被相続人を自宅で少なくとも1年介護していた者は、たとえ法的な相続人ではなくても遺産全体の最大2割を寄与分として受け取ることができるのです。また、嫁と養子縁組をして法的な相続人にしてしまえば、2割以上を渡すこともできます。

いずれの場合にも生前から被相続人と話し合わなければならず「お金目当てに介護していると思われたくない」など、話を切り出しにくいかもしれません。しかし、介護が終わった後の嫁の人生もあるのです。それこそ、自分自身の介護が必要になる日が来ないとも限りません。おそらくその時には今ほど介護保険も充実しておらず、自費負担が増えている可能性は少なくありません。

■お互いの思いやりも大事

無償の介護は確かに素晴らしいことです。しかし、誰に対してもそういった美談を求めるというのは果たして正しいのでしょうか。介護のために自分の人生の一時期を費やしてくれた人に対しては、たとえ血のつながりのない嫁であっても心から感謝し、財産に関しても法的にはどうあれ平等な立場として迎え入れるというのもひとつの考え方です。

また、介護をひきうけた嫁の方も、もしかしたら介護したくてもできなかった義兄弟への思いやりを忘れてはいけません。介護をしたのだから何でも主張を通したいというのは奢りです。お互いに思いやりを持って歩み寄ることが一番大切なのではないでしょうか。

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